画面オフOK！精神科医から学ぶ心の基礎知識第2段！新たな神経系を理解するポリヴェーガル理論がヨガ業界へ
精神科医：松島幸恵医師

講座について

自律神経の新しい概念！ポリヴェーガル理論

血管やあらゆる内臓器官を自分の意思とは無関係に調整してくれる神経である自律神経。「自律神経のバランスを整えるヨガクラス」というのもよく目にするようになってきました。

自律神経には、交感神経と副交感神経という2種類があります。この2つの神経がバランスを保ちながら、私たちの生命を維持してくれていて、交感神経は興奮、緊張状態の神経で、元々は戦ったり、逃げるための神経、副交感神経はリラックスの神経で、夜寝ている時やリラックス時に働く神経だということは、勉強したことがある人は、ご存知かもしれません。

現代人は、ストレスによって交感神経がオンになってる時間が長く、この自律神経のバランスが崩れているため、交感神経と副交感神経の両方がしっかり働き、そのバランスがとれている状態を取り戻そう！というのが、これまでの一般常識でした。

しかし、この常識にプラスα新たな理論として登場したのが「ポリヴェーガル理論」です。

ポリヴェーガル理論とは？

ポリヴェーガル理論（多重迷走神経論）とは、1995年ステファン・ポージェス博士によって発表された神経系の新しい理解です。これまでは、前項で書いたように、人の神経系の働きは大きく分けると『交感神経系と副交感神経系』というのが一般的でしたが、博士は人類の進化の過程から副交感神経に含まれる2つの迷走神経の働きに注目しました。それが、『腹側迷走神経系』と、『背側迷走神経系』です。

つまり、副交感神経を語るには2つの迷走神経を知る必要があるということです。

今まで、人間の神経系は大きなストレスから自分を守るためには、交感神経による「闘争／逃走（戦うか逃げるか）」という、1つの反応しかないと一般的に考えられていました。しかし、ポリヴェーガル理論では、命が脅かされた時には、もう1つ別の防御システムが発動すると考えます。それが「不動」「シャットダウン」「解離」という反応です。

よく「あまりの恐怖に身動きが取れなくなる」という言葉を聞いたことがありますよね。言い返したいのに言い返せない、逃げ出したいのに体が動かない。頭が真っ白になる状況です。この状況、従来の考え方でいくと、交感神経が働きそうな気がしませんか？しかし、今回の理論を学ぶともうお分かりですよね。副交感神経である背側迷走神経が働き、「不動」つまり動けなくなっている状態なのです。

これはこれまでにない発見であり、これが人間の正常な反応である、ということがわかったことで、劇的に進歩した治療がありました。それが、「トラウマ」に対する治療です。

ポリヴェーガル理論をヨガに活かす！

このポリヴェーガル理論は、トラウマ治療に大きな進歩をもたらしました。トラウマとは心的外傷、つまり「心の傷」を指します。その人の生命、存在に強い衝撃をもたらす事象を外傷性ストレッサーと呼び、その体験をトラウマ体験と呼びます。

トラウマ、と聞くと命の危険が及ぶような出来事、事件や事故のような出来事思い浮かべるかもしれませんが、ご自身の小さいころの体験、とても嫌な体験、例えば、上司に怒られて会社に行けない、学校に行けない。その他にも、現在生きづらさを感じる体験をしている人にとってはこのポリヴェーガル理論を学ぶことはとても役に立つと思います。

ポリヴェーガル理論では、私たちには、ちゃんとストレスや辛い経験から立ち直ることができるということを教えてくれます。人間にはちゃんとレジリエンスが備わっていて回復することができるという希望を持てるのではないでしょうか。

安心安全なヨガクラスを作る。生徒を理解し、寄り添えるヨガインストラクターに

本講座では、ヨガインストラクターが安心・安全な場所を作ることの必要性、そして神経系に効くエクササイズやヨガの方法、そして、実践もお伝えします。

講師である松島幸恵医師は、現役の精神科専門医でもあります。実際にご自身のメンタルクリニックに通われているクライアントにヨガを提供し、ケアをし続けている専門家。

ヨガとメンタルケアについて、日々ご自身のスタジオで研究を続けています。その松島医医師の話すケーススタディーは「勉強になる」と大人気。精神科のお医者さんというと恐縮してしまうかもしれませんが、その必要はありません。

とても優しく、面白く講義をしてくださいますので、ぜひリラックスして講義に臨んでください。

コロナによるパンデミックや戦争など、現代社会は思いもよらない出来事が多く、予測がつきません。しかし、少しでも専門知識を持っておくことで、ヨガができることはとても増えるということを知ってほしいと思います。

ヨガ×ポリヴェーガル理論、ぜひご受講してみてください。