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「分かりません、教えて下さい」
なかなか言いづらい言葉ではありますよね。
ましてや、ヨガのインストラクターとして生徒さんの前に立っている時は、「知っていないといけない」という意識が働き、なかなか「分かりません、教えて下さい」のひとことが出てこない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「シニアヨガ」は何を目的としているのか?
シニアヨガは、やさしいアーサナを取り入れたり、プロップスと呼ばれる道具を使ったり、筋力が落ちている高齢者の方でも安全にできるようにいろいろな工夫がされたヨガです。
ヨガの自律神経を整えたり、マインドを落ち着かせる効果は、年を重ねていくごとに募る、精神的な落ち込みを和らげてくれることもあります。
シニアヨガの目的を考えたとき「健康寿命を延ばす」という大きな捉え方もできます。しかし、ほんとうにそれだけで良いのでしょうか?
「人生のセンパイにヨガを教える」なんておこがましい。内田先生の真意とは?
人生の先輩に「何かを説く」って滑稽な話だよね。
ヨガ解剖学講師の内田かつのり先生は言います。
とはいえ、「ヨガを教えるのがヨガのインストラクターの仕事じゃないの?」
と思うかたもいらっしゃるのでは。
しかし、よく考えてみて下さい。目の前のシニアの方に、「ヨガを教えますよ」という姿勢で接するのと、「人生のあれこれを私に教えて下さい」という姿勢で接するのと、どちらがいい関係を築けそうでしょう?
ヨガを伝える「仕事」って何が目的なのでしょう。
ヨガを受けた後、すこしでも軽やかでいい気分になることがそれだとしたら、目の前の人と過ごす空間を朗らかにして、いい関係性を築くことが目的の1つでもいいのではないでしょうか。
むしろ、ヨガのいいところを伝えたいと考えるのであれば、心を開いてもらうことは、すべての第1歩ではないでしょうか。
年齢を重ねるごとにミクロ化していく世界
歳を重ねれば重ねるほど、ミクロの世界になるんだよ
若いうちは、動けるし行動範囲も広い。これをしよう、あれをしようと、外に向かって世界が広がっています。
しかし、年を重ねるごとに物理的に体の動きも制限されたり、人間関係もだんだんと狭くなってきたり、孤独感、喪失感も募ってきます。
人生の最後へのカウントダウンが始まっていると認識した時点で、目の前の1つ1つの小さな出来事が、かけがえのないことだと思う方もいらっしゃると思います。
そのような方に、八支則の話をしたところで「もういいんだよ」と思われても仕方のないことではないでしょうか。
シニアにヨガを伝える上で、本当に大切なこと
ヨガを伝えることに一生懸命になり過ぎて、あたりまえのことを忘れていませんか?
たしかに、ヨガっていいものであることには変わりありません。内田先生も、ヨガは正しくやれば、運動療法になり得るとの信念から、解剖学をベースとしたヨガを伝え続けています。
しかし、いつもシニアヨガ指導者養成講座の最後におっしゃることがあります。
3日間散々、解剖学解剖学って言ってるけど、体を診るのが大事だよ、と言ってるけど…、一番大切なのは…マインドだよね
解剖学の知識があった上で、心もなきゃいけないよ
「心を傾けて聴く=傾聴」の姿勢がシニアヨガでは一番大切だと内田先生は言います。
「バンダ」や「チャクラ」、「ヨガ哲学」。どれもヨガを学ぶ上でもちろん、大切な概念だと思います。
しかし、長い歳月を経て、人生の終わりに向かって、今を生きている先輩方は、もっと大切なことを知っています。
その大切なことを「教わる」という姿勢で、話を聴く。
それだけで、目の前の方は笑顔になり、一緒に身体を動かしてくれる関係にもなり得るのではないでしょうか。
YouTube動画の中で内田先生はおっしゃいました。
「ヨガ哲学を理解しているなら、なおさらその方を見ようよ」
はっとさせられる言葉です。