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幸恵先生との出会いは、コロナの真っ只中。2020年のことでした。
こんにちは、ヨガジェネレーションのべーです。
前代未聞の感染症が広がる中、体だけでなく、心が疲れてしまう人も増えたことは、皆さんもよくご存じだと思います。そんなとき、ヨガジェネレーションでメディアサイトの記事を書いてくださっていた精神科医の松島幸恵先生にお願いして始めたのが、「ヨガ×心の基礎知識」。
ヨガと同時に「心の扱い方」を学ぶ講座でした。「ヨガ×精神疾患」「ヨガ×ポリヴェーガル理論」「ヨガ×セルフコンパッション」──この3つが、幸恵先生と始めた最初の講座です。
あれから4年。
多くの生徒さんにこれらの講座を受講いただき、「もっと深く学びたい」という声も増えてきました。そして、いよいよ形になったのが、今回初開催となったこの講座。メンタルケアヨガ指導者養成講座。
4年の歳月をかけて、本当に生徒さんに必要なことをまとめあげ、何度も打ち合わせを重ねて作り上げたこの講座を、皆さんに届けられることがとても嬉しいです。
メンタルに効かせたいなら「体」は重要

これは、幸恵先生がいつもおっしゃっていること。
心理の先生は体にフォーカスすることって、あまりないと思うんですね。私もそうです。言葉や場の雰囲気は大切にするんですが、心理の分野では体にはあまり注目されない。でも、やっぱり体って大事ですよね。メンタルに効かせたいなら、体を置いてけぼりにしたらダメです。
ヨガに生きる力をもらってきた方の多くが、「体を動かすことで前向きになれた」と感じているのではないでしょうか。体と心が密接につながっているということは、ヨガを続けてきた人には実感としてあるはずです。
しかし、メンタルに不調を抱える多くの人が、こうした身体感覚を失っているという現実もあります。この身体感覚を取り戻していくことは、ヨガの大切な役割の一つ。
そこで今回は、トレーニングの中で幸恵先生が話してくれた、「ヨガが心に影響を与えるメカニズム」を少しご紹介します。
ヨガがメンタルに与えるメカニズム──神経可塑性(しんけいかそせい)

まず大前提として、私たちの脳には神経可塑性と呼ばれる力が備わっています。これは、経験や学習によって脳の構造や機能が変化するという性質のこと。
70代の人でも、マインドフルネスのプラクティスを行うことで脳の領域が変化するという結果が出ています。
と幸恵先生。つまり、ヨガや瞑想には、脳そのものを変えていく力があり、その効果は年齢を重ねても失われないということです。
さらに、ヨガが私たちに与える作用には、2つの方向性があると幸恵先生は話します。
トップダウン・ボトムアップ──2つの神経へのアプローチ

トップダウン(上位からの制御)
これが、他のスポーツとは大きく異なる点です。瞑想やマインドフルネス、ヨガ哲学を意識した生き方をすることで、前頭前野が活性化され、神経可塑性を促進し、感情の暴走を抑える回路が強化されるといわれています。
体を使うという点では、他の運動でも効果があるかもしれません。
しかし、「自分に意識を向ける」という視点は、ヨガ特有のもの。これが、心に働きかける大きな鍵になります。
こうした実践を重ねることで、ストレス耐性を高め、ホメオスタシス(生体恒常性)を安定させる効果が期待できます。
ボトムアップ(体から心へ)
ヨガのアーサナやムドラ、プラーナヤーマは、体への気づき=身体感覚を育てます。ヨガの最中は、できるだけ体に注意を向けてほしいですね。その“内受容感覚”は、自律神経に働きかけ、脳の過剰な反応性を落ち着かせてくれます。
つまり、ヨガは上からも下からも神経系に働きかけ、穏やかで安定した心の状態をつくってくれるのです。
ヨガを実践していると、こうした効果を「何となく感じている」方も多いと思いますが、こうして仕組みを学ぶと答え合わせのようで面白いですよね。
幸恵先生の講座では、実際の研究データや科学的知見を交えて学ぶことができ、あっという間に時間が過ぎていきます。
薬や言葉では届かない部分に手を差し伸べる──それがヨガ

講座テキストをいただいたとき、冒頭にこんな言葉がありました。
薬や言葉では届かない部分に、そっと手を差し伸べてくれる静かな力。それが、私が精神科医として、そして一人の実践者として伝えたいヨガの本質です。
精神科医として多くの患者さんと向き合いながらも、ヨガを通じて「心」にアプローチし続ける幸恵先生。私たち以上に過酷な現実と向き合いながら、日々人の心に寄り添っています。
だからこそ、幸恵先生にしかできない講座だと私は思っています。何千年も続くヨガと、現代科学の融合──それが、この講座の核なのです。
また次回も、一部ではありますが、講座の魅力を皆さんにお届けできるようにレポートしたいと思います。どうぞ楽しみにしていてくださいね。