パソコンに向かって座っている腰が痛い男性イラスト。

「今日はどこか痛いところはありますか?」
ヨガクラスの最初のコミュニケーションで確認しているインストラクターは多いはず。その中で腰痛と答える生徒さんが多いと思いませんか?
厚生労働省が発行している「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によれば、自覚症状のある不調で腰痛は男性では1位、女性では2位にあげられています。

腰痛の原因や症状は様々で、そのうちよく耳にする椎間板ヘルニアは、立ち姿勢よりも座り姿勢のほうが発症率が4割も高いと言われています。デスクワークの欠かせない現代病の一つと言えますね。

ヨガ解剖学講師内田かつのり先生は、どんなことを講座に期待してお越しいただいているのかを事前に確認するためにアンケートをとっています。回答に多くみられるのが「○○痛(例えば腰痛、具体的な症状、病名など)の生徒さんを改善してあげたい。」というもの。

優しい・・・(T . T)多くの方が誰かの役に立ちたい想いでヨガを学んでいるようです。とても素晴らしいことだからこそ、一度足を止めて考えてみてほしいことがあります。それは、ひとこと「改善」といってもどうなることを期待しているのか、ということです。

完治させることを想定しているのだとしたら赤信号です。急ブレーキで立ち止まって下さい。なぜなら、治療行為は医師の専門分野です。ヨガインストラクターは医師ではないことを自覚しなけばなりません。完治するまで生徒さんと寄り添いたい、寄り添う為にヨガを通してできることはないか、そんな立ち位置が良いかと思います。

しかし、ヨガが有効なことは確かにあります。医師の診断はどうだったのかをヒアリングしたうえで、ヨガでできること、できないことを考えながら「生徒さんの不調改善」をサポートできる方法を考えてみましょう。
 
そこで。
今回は「腰痛」をテーマに、ヨガ解剖学講座骨盤セラピーという講座から、不調改善にヨガで寄り添うヒントをご紹介します。

 

ポイント1:どんな痛みなの?腰痛といっても症状は様々

お悩みケース

  • 腰痛を抱えた生徒さんにヨガクラスに参加して頂いていいものかどうかを判断できるようになりたい
  • お尻や骨盤周りに痛みを感じている生徒さんがいます。骨盤の仕組みを知って改善できたらな、と思っています
  • 腰痛や膝痛がヨガにより軽減するときいたことがあるが、実際どのようなことができるのか

実際に頂いたアンケートをもとに、ヨガインストラクターが腰痛に寄り添う為の3つのポイントを内田先生の骨盤セラピーからご紹介いたします。アンケートは「そうそう!」と共感できるものがきっとあるはず。
 

まずは生徒さんの話を聞こう

「腰が痛い」と教えて下さった生徒さんがクラスに参加していいものかどうかを判断するには、大前提として医師の診断の有無と内容を確認すべきです。アンケートの中には「それくらいしかできなくて・・」と記入されている方もいらっしゃいましたが、むしろそれが必要不可欠なことです。大切なことです。わからないことを素直に「すみません」とお話を伺うほうが信頼に繋がります。

痛みの種類がヒントをくれる

ヨガ解剖学講師内田かつのり先生の講座「骨盤セラピー」のテキストの一部

「腰痛」はこれだけ細かくわけてヒアリングすることが可能

「腰が痛い」といっても症状も箇所も原因も様々。ひとくくりにできるものではありません。ご覧いただいているものは骨盤セラピーで配布している資料の一部。痛みの原因についてのヒアリングを行うためのものです。
 
「どのように痛みますか」「どのような動きをしたら痛みますか」そのようなヒアリングでヨガクラスがその生徒さんにとって有効なものなのか、または悪化させてしまうのかを判断基準にできます。痛みの発信源が骨なのか筋肉なのかがわかるだけでも、医師による治療が最優先なのか、運動が有効に働くのかを内田先生は判断できると教えてくださいました。(少し踏み込んだ話になりますので、実際の活用方法はぜひ講座で☆)

改善に寄り添うためには、方法よりも知ることから

「腰痛の生徒さんに何をしたらいいのか」という方法を知りたい方はたくさんいらっしゃいます。でも前述したとおり、腰痛といっても様々です。もし「椎間板ヘルニアの方にはこうするのがいいですよ」とどこかで情報を得たとしても、痛む箇所、症状の度合い、原因、治療の段階など、その方法が全てのヘルニアの方に当てはまるということは言えません。

「なら、その状況別に教えてほしい」そのような要望もあるかもしれません。しかしそれは膨大な知識量になることでしょう。もはや理学療法士や外科医と同じくらいの知識量を必要とするかもしれません。ヨガインストラクターは医師ではありません。そしてヨガは万能ではありません。生徒さんと初めましての段階でいろいろアドバイスできることは望ましいですが、それは経験を重ねていく中で答えられることを増やしていくことのほうが賢明な気がします。それよりもまずは初めましての出逢いを大切にして、お話に耳を傾むける、知らないことは素直に頭を下げてお伺いする、勉強する、改善に寄り添う信頼関係を築く、その生徒さんにとって適切な寄り添い方を見つけ出す、こうしたプロセスを積み重ねていくことが大切に思います。

ポイント2:「骨盤は歪まない」正しく寄り添い指導するためには正しい理解が大前提

  • お悩みケース「骨盤調整ヨガというクラスを受け持っているのですが、自分の指導に自信がなく疑問を感じたので
  • 骨盤に関する情報があまりにも多く、何が正しいのかわからない
  • 『歪む』とか『調整する』とか、よく耳にするが、実際どのようなことを指すのか知りたい
  • 正しい姿勢を・・と意識するとそり腰になっていると言われます。正しい骨盤の位置を知りたい。また正しい位置を保つために必要な筋肉・鍛え方を知りたい

自分自身の指導に疑問を感じて解剖学に興味を持たれる方は少なくありません。ホットヨガや公民館など、スタジオ以外の場所で活動している方が比較的多くみられます。「肩こりがひどいのよ~」「腰がいたくてさぁ~」「ちっとも痩せないのよ」といった健康の一環としてヨガを始めた生徒さんが多いのかもしれませんね。こうした生徒さんには、チャクラや哲学、エネルギーの話より解剖学に裏付けされたお話をしてあげたくなるのは自然なことです。

歪むという表現は誤解や不安を抱かせてしまう言葉

ヨガジェネレーションでは当たり前になっている骨盤は歪まないという言葉。内田先生が長い間ずっとヨガ業界に投げかけ続けているメッセージです。世の中で溢れている「骨盤の歪み」とはいったいどのようなことを指しているのか。全くのデタラメのものは論外で講座の中でしっかりと説明しています。問題は言い方・表現が発信者によってマチマチで誤解が生じていることです。内田先生はこうおっしゃっています。
 

ヨガ解剖学講師内田かつのりプロフィール写真

ヨガインストラクターは運動指導者と言い換えることができます。自分の発言には責任が伴います。正しいことが明確であるならば、正しく正確に伝える義務があります。不必要に「歪む」という言葉で不安を煽ることが許されてはいけないと、僕は思うのです。

分かりやすく、経験談が多い例を挙げますと「骨盤の左右の高さが違う」というもの。これはいったい何が起きてるのでしょうか?「骨盤が歪んでいますね」と言われがちです。ひとこと歪むといわれたら骨盤がどうにかなってしまっている、変形している、そのように感じることもあるでしょう。しかし、「骨自体が変形することはありません。そうではなく、左右に傾いているということは大いにあり得る話です。」と内田先生は言います。
 
「歪むって言ったっていいじゃないか」そんな意見もあるかもしれません。しかし、ではなぜ「歪む」という言葉を使いたいのでしょうか?傾いているなら「傾いている」と伝えれば十分です。歪むという言葉を使うことに生徒さんに寄り添う優しさや親切な心はあまり感じられないように思います。内田先生がおっしゃっているように、正しく正確に伝えられるのであれば、伝えるべきです。

正しく伝える先にあるのは適切な指導

ヨガ解剖学講師内田かつのり先生の講座「骨盤セラピー」のテキストの一部

正しい姿勢を保つための筋肉が分かれば、その目的に沿ったヨガクラスが可能に

上記の例のように「傾いている」から「傾いている」と伝える、とても自然なことなのですが、なぜか「歪む」という言葉が選ばれています。正確に伝える義務があるのは前述のとおりですが、もう一つ大切なのは、適切な指導に繋げることができるからです。
 
アンケートでよく見かけますが、ご自身が「歪む」と言われたことがある、自分の生徒さんが「歪む」と言われたらしい、という場合、実際にどうなっているのかの説明がなされていないことが多いようです。それではそのいわゆる「歪み」はいったいどうしたら改善していいのか不明確なまま過ごすことになります。
 
正確に伝えることで、お互い納得したうえで適切な指導を進めることができます。まずは原因を究明。骨盤の左側が右側に比べて位置が高いという傾きを感じた場合、どんなことが原因にあげられるのか。姿勢はどうか、カバンはいつも同じ側に斜め掛けしていないか、どこか痛みがあってかばっていないか、偏った姿勢や運動が必要な仕事や生活などの背景はないか、などなど。その方を知ることでヒントが得られます。その方の背景から、もし左体側の柔軟性が低い(硬い)ということが原因の一つと推測できるのであれば、左体側にストレッチが入るアサナをいれたシークエンスをしてみる、というような双方が納得した形で「ヨガで寄り添う」を具体的に進めることができます。

ポイント3:適切な指導が日々に活き続けるセルフケアの提案

「治す」ことはできないまでも、痛みを緩和することはできないのか。できるなら知りたい

痛みを緩和することはできるかもしれません。病気やケガによる症状を和らげることを対症療法といいます。治療は無理でもこの対症療法においては、ヨガはとても有効に働く場合があると内田先生は教えてくれました。
 
前述のとおり、双方が納得した形で指導ができたなら、セルフケアのアドバイスをお伝えすることができます。ヨガスタジオに通えなくても、直接会うことができなくても「姿勢に気を付けよう」「あのポーズを毎日やっておこう」「アドバイスを毎日気を付けよう」といった具合に、自分の指導が生徒さんの日々に活き続けます。「歪んでいますね」の一言だけではこうはなりません。説明が出来なければこうはなりません。かくかくしかじか○○ですね、というコミュニケーションが可能にしてくれます。

おうちでできる「ツボ」という身近なセルフケア

ヨガ解剖学講師内田かつのり先生の講座「骨盤セラピー」のテキストの一部

本を見れば場所はわかるが、個々の僅かな違いに対応するのは難しい

内田先生の骨盤セラピーでは、経絡(けいらく)といういわゆる「ツボ」の話にふれています。鍼灸師でもある内田先生ならではのアプローチ方法です。「ヨガは万能薬ではない」からこそ、ヨガで補いきれないことは、ヨガ以外の力を借りればいいのではないか、という提案の一つです。
 
腰が痛いとき、自分で痛みを感じるあたりを指でぐぅ~っと押したことはありませんか?治るわけではないけど、なんか痛みが和らぐような心地よい感じ。そこが偶然ツボを押せているのかもしれませんが、骨盤セラピーでは対症療法の一つとして腰痛に効くと言われているツボをお伝えしています。自分自身のセルフケアや、ツボ押しで生徒さんとコミュニケーションに役立てて頂けます。
 

西洋医学的なツボ「トリガーポイント」

内田先生は、鍼灸を東洋医学(経絡)と同時に西洋医学の側面からも勉強されたそうです。西洋医学で言うところのツボに該当するのがトリガーポイントといいます。東洋医学と西洋医学ですから、直接的に関係はないのですが、内田先生が学びや経験を重ねれば重ねるほど経絡とトリガーポイントが似通っていると感じたようです。

トリガーポイントとは、痛みの引き金になっている場所のことをいいます。例えば、腰に痛みを感じているが、その原因はお尻の横だったという具合です。お尻の横がトリガーポイント、腰の痛みは関連痛などと呼ぶそうです。講座の中では、腰痛が関連痛として発症している場合の特徴ある行動から考えられるトリガーポイントをお伝えしています。

まとめ:「腰痛の方にどんなヨガが有効ですか?」という質問の前に考えるべきこと

  • はっきりわかっていることと対照的な感覚的なこと、ヨガのクラスではどこまで話すべきか迷うことがあります

長文、お付き合い頂きいありがとうございます。「骨盤は歪まない」に隠された「正しいことは正しく正確に」という内田先生の想いが込められた骨盤セラピーという一つの講座からヒントを得ながら、腰痛と解剖学とヨガをどのように繋げられるのかをまとめてみました。
 
ただ、上記のお悩みのように、感覚的なお話や内容があっても全然良いと思います。それはクラスの、そして個々の個性によるものですし、ヨガは感覚的な側面があるものですから。お悩みにあるようにどこまで話すべきかと言えば、おそらく、はっきりとしたことを必要とされている生徒さんにははっきりとした内容でお話をして差し上げることが望ましいのだと思います。
 
「○○です」と言い切るために大きな力になってくれるのが解剖学です。「解剖学が必要なことは分かっているけど、果たしてどんな役に立つのだろうか?」そんな疑問により解剖学から遠ざかっている方もいるかもしれませんが、

  • 柔軟性を上げたい
  • 戦士のポーズ3番でフラフラしないようになりたい
  • ダウンドッグのアライメントを整えたい

など、具体的な要望に応えられるために解剖学はとても力強い味方なるということを覚えておいていただければと思います。
 
「どんなヨガが有効ですか?」こうした質問は数多く内田先生のもとに集まります。しかしこの質問を投げかける前に「答えは一つではない」と立ち止まって考えてみてください。ある一つの方法を知ることよりもまずコミュニケーションで生徒さんのことを知り(ポイント1)、その場でわかることなら正しく正確に伝え、知らないことがあるなら寄り添い方を考える(ポイント2)、丁寧に信頼関係を気づくことが、スタジオを離れた時間でも生徒さんの日々にヨガが活き続けます(ポイント3)。そしたらきっとその生徒さんはまた会いに来てくださいます。
 
腰痛に限らず、どんな怪我や病気においても、改善の力になりたいという想いは大切にしながら、今できるベストを尽くすことで自分に合格点をあげてもいいのではないかと思います。

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