ヨガマットを持つ医者

過去5年の間にヨガセラピーの研究が盛んに

以前、ハワイのヨガ講師のタイラー・モンガン先生がこうおっしゃっていました。

医学や科学の人間はヨガの効果を示すエビデンスがないという。でもそれは本気で研究費をかけて証明しようとしていないだけ。

 

元々医者を目指していた彼から出たその発言がとても印象的だったのですが、そんな言葉を思い出す非常に興味深い記事をつい先日、アメリカ版ヨガジャーナルのサイトで発見しました。その記事のタイトルは「西洋医学の医者が今、なぜヨガセラピーを処方するのか?」

ヨガの研究を長く続け、ハーバード・メディカル・スクールの助教授でもあるカルサ氏によるとヨガセラピーの研究や臨床試験がここ5年で急激に盛んになったとのこと。約500の研究論文が発表されており、効果が見られた症状や疾患は腰痛、鬱、不安障害、不眠症、循環器疾患、高血圧、がん治療の副作用の緩和など多岐に渡ります。

アメリカでは退役軍人のケアにしばしば最先端医療や科学が用いられ話題となりますが、同記事も例外ではなく、40代の海軍の帰還兵がヨガセラピーを受けてどう変わったかが紹介されています。背中の負傷により神経へダメージを受け、一人で立つこともままならず、激しい痛みや鬱に悩んでいたところ、施設で他の帰還兵と共にヨガセラピーを受けたそうです。

彼らを担当したヨガセラピストはやさしいストレッチを促すポーズを教え、自宅で毎日行なうよう指導。数ヶ月の間に体の可動域が広がり、痛みが和らぎ、今は痛みを感じることなく、ハイキングやジョギングができるまでになったそうです。

安全かつ経済的。医療的措置に代わる存在としてのヨガ

ヨガを教わる男女

あらゆる医療措置には副作用等のリスクがつきもの。そして当然、疾患の深刻度に応じて医療費は高額になるのが普通ですが、ヨガであれば安全面と経済面双方をカバーできるため注目されています。

アメリカ版ヨガジャーナルで医療関連の記事を担当するマッキャール氏は「経済的に困窮している人々にこそ、治療としてのヨガにアクセスできる仕組み作りが大切」と捉えています。なぜなら彼らは強いストレスに晒され、より高い確率で生活習慣病を患っているためです。いずれヨガによる治療を保険でカバーできるような社会までを見据えていることに、個人的にとても驚きました。

歴史的に見れば伝統的なヨガは一対一で行われ、先生が生徒にポーズを処方することで慢性疾患の改善に取り組んでいました。西洋医学の分野でそれが行われ始めたのはごく最近のこと。しかしヘルスケア従事者や主要なヘルスケアセンターがヨガを積極的に導入する動きが顕著になってきています。

例えば大規模な癌治療センターでヨガのプログラムがないところを見つけるほうが難しいという現状で、患者も鍼灸やカイロプラティック、マッサージ、ヨガといった補完医療を希望する人が増えているそうです。

症状別ではなく「個人ベース」で診るのがヨガセラピー

問診を受ける女性

ヨガセラピーのセッションは基本的に一対一で行われます。現在ヨガセラピストの育成にも携わるマッキャール氏はこう言っています。

ヨガセラピーでは症状別でなく、個人ベースでクライアントを診ます。それは不調に悩む人がいた場合、その原因は1つではなく複数の疾患を併発している可能性が高いからです。また、例えば腰痛のケアにあたった結果、クライアントの睡眠の質が高まり、気持ちが前向きになることもよくあります。

生徒の不調に寄り添いたい指導者にこそヨガセラピーはオススメ

ジュディクラップ

ヨガセラピーの専門家であるジュディ・クラップ先生は講座の中でよくこうおっしゃいます。

ヨガ指導者は医者ではない。そこを履き違えてはいけないけれど、私たちにできることは沢山ある。

一言にヨガセラピーといってもその守備範囲は広く、人によってアプローチも異なります。ジュディ先生は人の体を扱う以上、全てのヨガ指導者は解剖学の知識を身につけるべきと考えており、何よりも「安全なヨガ指導」に力を入れています。また、ヨガをする人が自分の体と体の動きをより深く理解することで、ヨガの練習中はもとより、日常生活においてもストレスなく動くことができる結果、豊かな人生が送れるようになります。

以下は彼女の講座の参加者の声です。

自分のヨガ指導が怪我をさせない、生徒の体の安全を第一に考えるものへ根本から変わった。ジュディー先生のヨガセラピー講座を受けて数年経つが、彼女の教えは色褪せず、今も自分のヨガ指導の軸となっている。また、慢性痛を抱える生徒のためのポーズの軽減法や調整法を学べたのもとても大きな学びとなった。腰痛や関節痛に悩みを生徒は多く、彼らに喜ばれるヨガクラスができるようになった。

「生徒から不調を相談される。でもどう答えたら良いかわからない」と悩んでいる方はぜひヨガセラピーの講座を受けてみては?

<参考>
ヨガジャーナルアメリカ版
Why More Western Doctors Are Now Prescribing Yoga Therapy