産後うつに陥っている母親と赤ちゃん

出産後1年未満の母親の死亡原因は「産後うつ」が最多

うつになって自殺しそうな人
2018年に国立成育医療研究センターが発表した2年間(2015~2016年)の調査結果によると、妊産婦の死亡原因の30%が自殺であったことが分かりました。さらに自殺者のうち90%は産後1年未満の母親であり、その主な原因は「産後うつ」でした。

時期を調べてみると、産後1ヶ月に自殺した人数と2~11ヶ月に自殺した人数に差はなく、年間を通して起きていました。さらに、35歳以上、初産、世帯に仕事をしている家族がいない女性の自殺率が高かったことも分かりました。

また、産後うつは自殺に至らなくても育児放棄や虐待につながる可能性もあるとして、母親の心身だけではなく新生児への影響も危惧されています。

このような実態から、妊産婦のメンタルヘルスケアの重要性が医療機関や自治体で再認識されるようになりました。

産後うつの主な症状

産後うつの症状とは
産後うつとは極度の悲しみや疲労感、睡眠障害などの症状が数週間から数ヶ月間続く状態で、10~15%の女性に発症していると言われています。

産後うつよりも軽度な症状で期間が短いとされるベビーブルーと呼ばれる状態があります。70~80%の女性がベビーブルーを体験しますが、数週間で自然に治まるとされています。

産後うつの原因は出産によるホルモンバランスの乱れや疲労などの肉体的な原因、ストレスによる精神的な原因の両方があると言われています。さらに核家族化、共働き、晩婚晩産などの現代社会では、ワンオペ育児、孤独感、母乳が出ないなども原因として挙げられます。

【産後うつの主な症状】
※下記は症状の例であり、診断は医師にしかできません

  • 気分が激しく落ち込む、涙もろい
  • イライラしたり、怒りやすい
  • 気分の浮き沈みが激しい
  • 赤ちゃんを可愛いと感じられない
  • 食欲不振や過食
  • 不眠や過眠
  • 極度な疲労感
  • 以前は楽しんでいたものが楽しめなくない
  • 自分を良い母親ではないと感じてしまう
  • パートナーを避けてしまう
  • 自分に価値がないと思う感情に陥る
  • 集中力がなくなる
  • 物事への対応力が落ちる
  • 重度な不安やパニック発作が起きることがある
  • 自分や赤ちゃんを傷つけたくなるような衝動に駆られる
  • 死や自殺について繰り返し考える

産後ヨガでできるサポート

赤ちゃんと楽しく産後ヨガをする母親
ベビーブルーや産後うつは珍しい症状ではなく、多くの人が悩んでおりサポートを必要としています。ヨガ指導者は医師ではないので診断や治療を施すことはできませんが、リラックスできる環境や交流の場の提供、出産や育児によって疲弊した身体のケアを手伝うことで心身のサポートをすることができます。

【心のサポート】
生活の場が家の中だけになってしまう産後の女性は少なくありません。外出したくても赤ちゃん連れで安心して行ける場所は多くなく、気分転換をできずに1人で育児の不安や孤独に悩んでいる方もいます。

赤ちゃんと一緒に参加できる産後ヨガクラスは、産後の女性が安心して気分転換をできる場所の1つとなり得ます。また、クラスに来ている他の産後の女性と交流することで孤独感から解放され、悩みを共有することで不安も和らげることができる場にもなります。

【身体のサポート】
産後ヨガのクラスでは、産後に身体に必要なポーズを適切な負荷と方法で行っていきます。例えば、出産によって緩んだ筋肉をプロップスを使いながら無理なく強化するポーズや授乳などの育児によって生じる身体の疲れや歪みを緩和するポーズが挙げられます。

本来の身体的コンディションを取り戻していくことで、生活がしやすくなり、自分自身や家事・育児に対して自信を持てるようになることが見込まれます。

産後ヨガインストラクターとして大切なこと

マットの上で勉強するヨガインストラクター
先述した通り、ヨガインストラクターは医療従事者ではありません。産後ヨガインストラクターは必要に応じて生徒に専門家のところへ行くよう勧められるように、しっかりと産後の女性の心身の状態について継続的に学びを深めていくことが大切です。

日頃より関連学会や団体が発行している文献や産前産後のヨガ指導者養成講座やワークショップをチェックして、安心安全なヨガクラスを提供していきましょう♪

【参考文献】
参考1:「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」(国立成育医療研究センター)

参考2:「知って欲しい‟産後うつ”~92人自殺の衝撃~」(NHK NEWSWEB)

参考3:「産後うつの症状」(パンパース)