幸せなお産風景

妊娠中や出産時の体験がネガティブなものになると、産後うつを引き起こしたり、子どもに対して愛情を持てなくなるリスクが上がるという研究結果をご存知でしょうか?

医療の進歩により安全に出産する環境は整いましたが、妊婦のメンタルサポートはまだ十分行き届いていない現実があります。

妊婦さんと接する機会のあるマタニティヨガインストラクターは、どのようにメンタルサポートができるでしょうか?実はそのヒントが「ドゥーラ」という産前産後の女性をサポートする専門職にありました!

本ブログでは、海外でも多くのメリットが証明されているドゥーラの仕事内容と、マタニティヨガインストラクターがどのようにドゥーラの知識やスキルを指導に活かせるか考察していきます。

医療が発展したからこそ、必要とされる妊婦のメンタルサポート

産院での出産の様子
日本では1950年代から出産が自宅から医療施設に切り替わり、現在では95%以上の分娩が病院や診療所で行われています。

医療の進歩により帝王切開や会陰切開などの医療措置が増え、赤ちゃんを無事に出産する方法が増えた半面、医療機関が感染症予防や処置の行いやすさを確保するために出産の立ち合いを制限するケースも多くなりました。

ほとんどの施設では、医師、助産師、看護師がひとりの妊婦に終始付き添うことは難しく、家族が来るまで陣痛中ひとりで過ごさなければならないこともあります。

最近の研究では、出産体験の満足度が低いと産後うつになりやすかったり、子どもへの愛着度が低くなることが分かっています。そのため、妊婦のメンタルサポートも重要視されているのです。

妊婦を支える、家族以外の存在

妊婦と手を握るドゥーラ
日本ではまだ普及していませんが、海外にはドゥーラが妊婦のメンタルサポート役として活躍しています。

ドゥーラとは、産前産後の女性の心身の管理や家事育児の手伝い、生活におけるアドバイスをする職業です。海外では、ドゥーラのサポートが不要な医療介入を防ぐことに繋がっているという研究データが出ており、とても注目されている職業です。

海外の産院ではドゥーラの陣痛や出産の立ち合いが認められているところがあります。ドゥーラは医療スタッフが不在の間も妊婦を見守り、お産の時は痛みを緩和するための姿勢をガイドしたり、立ち会っている夫や家族にサポート方法のアドバイスをするなど、妊婦の痛みや恐怖を取り除くためにありとあらゆる手を尽くします。

また、妊娠中はドゥーラは妊婦とそのパートナーにお産にや産後の育児に関する情報を与え、出産当日とその後の心の準備を促していきます。ドゥーラの存在は、不要な医療介入が減らすだけではなく、夫婦間の出産に対する温度差を埋めたり、親としての自覚を芽生えさせたりすることにも貢献しています。

このように、ドゥーラは妊婦とその家族のメンタル、身体、知識のサポートをして、妊婦を健やかなお産に導いていきます。

一見、妊婦のメンタルサポートはパートナーだけでも十分可能と思われがちですが、お産に関する知識量、妊婦とのコミュニケーション時の言葉選びや声がけのタイミングなどは専門的な訓練を受けたドゥーラの方が長けていると言われています。

海外の調査では、分娩時に夫が積極的に行っているサポートは妊婦を誘導する役割ではなく、目撃者(witness)や一緒に頑張る味方(team mate)としての役割であったと報告されています。

また、夫も出産の当事者のため、妊婦同様に不安やストレスを抱えていることが多いとされています。そのため、夫にドゥーラのように妊婦のお産をガイドすることは難しいと調査では示唆されています。

マタニティヨガにも活かせるドゥーラの知識やスキル

マタニティヨガの様子
メディカルオンラインに掲載されている論文「出産の満足度と母親の児に対する愛着との関連」によると、分娩時に仰向け以外の姿勢を姿勢を勧められた女性は回答者の約50%。また、自由に姿勢を変えられた女性は回答者の70%でした。

この結果から、多くの施設では自由に姿勢を変えられるのにもかかわらず、姿勢に関するアドバイスを受けられていないことが分かります。

日本では家族以外の人が出産に立ち会える産院はまだ多くありません。また、助産師や看護師は、医療スタッフとしての役割を果たさなければならないことから、ドゥーラのようにきめ細やかにサポートすることが難しいのが現状です。そのため、上記のような回答結果になったことが推測されます。

そこで、マタニティヨガインストラクターの出番です。

ドゥーラのように毎日お世話をしてあげることができなくても、出産の場に居合わせることができなくても、ドゥーラの知識を用いてレッスンを実施することで、出産満足度を上げる手助けができます。

例えば、下記のようなドゥーラの知識をレッスンに入れることができます。

  • 陣痛時の痛み緩和の姿勢の練習
  • お産のイメージトレーニング
  • 自宅でできるマッサージやセルフケア
  • パートナーにお願いできるケア
  • 産院との連携の取り方
  • バースプラン(出産計画書)の書き方 など

このように、ドゥーラの知識を学べばアーサナのレッスンだけではなく、ヨガ以外のレッスンやワークショップもできるようになり、マタニティヨガインストラクターとしての活動の幅を広げることができるでしょう。

ドゥーラについて学んでみよう

ドゥーラ入門集中講座
ヨガジェネレーションでは、産前ドゥーラが浸透している海外からドゥーラの有資格者を招いて「ドゥーラ入門集中講座」を開催しています。

担当講師のロージー・マダソン先生は、ドゥーラでもあり、マタニティヨガ・産後ヨガの講師でもあります。

ロージー先生は日本の産院事情についても理解をしており、それを踏まえた上でヨガインストラクターがどのようにドゥーラの知識を活かして妊婦をサポートできるか紹介していきます。

マタニティヨガインストラクターはもちろん、妊娠中の家族や友人がいる方にも役立つ情報が盛り沢山の講座です!

【参考資料】
参考1:岸 利江子 (2005)「ドゥーラ -その役割と実践-」
参考2:有本 梨花、島田三恵子(2010)「出産の満足度と母親の児に対する愛着との関連」