ヨーコ・フジワラの笑顔

ヨーコさん、練習をやりたくない日ってないんですか?

そう聞いた私に「あるよ、今日がその日。」と冗談交じりに話してくれた日も、インタビューしたのは、練習が終わったあとだったと記憶している。

クラスやワークショップが1日に3本ある日も、スキマ時間を使って必ず練習をしているアシュタンギー、ヨーコ・フジワラ。

しかし、そんなストイックな練習とは裏腹に、オーディエンスの前で太陽礼拝を行えば、少し恥ずかしそうにはにかむ笑顔を見せてくれるし、ワークショップを行えば、会場はヨガの講座なのか、コントをしているのかわからないくらいの爆笑の渦に包まれる。
ヨーコ・フジワラが逆転・アームバランスのワークショップで生徒さんと笑いあっている様子外部会場で行った講座の際は、騒音で苦情が来たらどうしようかと内心焦った、と思ったことは今のところ、胸にしまっている。

そんなヨーコ・フジワラは一体どんな想いでヨガと向き合っているのだろうか。どうして、こんなにも多くの人から愛されるのだろうか。今回はヨーコ・フジワラの内面にフォーカスしてインタビューをしてみた。

「後悔したくない」練習への原動力

ヨーコ・フジワラの練習風景

この日も早朝レッドクラスが終わり次の講座の時間までは自分の練習をしていた

ヨガジェネレーションスタッフ

ヨーコさんってどうしてそんなに練習できるんですか?やりたくない日があると思うんです。例えば疲れてる日とか。

ヨーコ・フジワラ

そうだね。今日は珍しく思ったよ。やめちゃおうかなぁって。「今日は疲れてるし、正直もう帰って昼寝しない?」って言う自分に一瞬乗ったよ?私。(笑)

ヨガジェネレーションスタッフ

え!?それなのにどうして?

ヨーコ・フジワラ

私の友人で癌で亡くなった女性がいるの。彼女、色々な治療をしたんだけど、どれもうまくいかなくて、最後の最後にようやく受け入れることができたんだけど。私にこんな話をしてくれたの。

「病気になるといろんなことができなくなる。それをネガティブ(できなくなって悲しい、悔しい)に捉えるのが多くの人だけど、私はポジティブ(これができない代わりにあれをやる時間が増えた)に捉えることができた。それができた理由はいろんなことを悔いなく一生懸命取り組んでいたから。」

って。多くの人が、できなくなったってことに対して残念になるのに、彼女は「アーサナができなくなった代わりにメディテーションをする時間が増えた。」って言ってたのね。

それを聞いていて思ったんだけど、一生懸命できるときにやっていなかった人は人生で何かができなくなったときに「あのときやっておけばよかった。」って思うんじゃないかなって。だから私はいずれか私の身体が動かなくなったとき、そういう後悔はしたくないなって思うの。

「諦めること」と「手放すこと」の違い

オハナスマイルで練習を行うヨーコ・フジワラ

ヨガジェネレーションスタッフ

なるほど。それがヨーコさんのストイックさの表れなんですね。

ヨーコ・フジワラ

他の人からすれば、「ヨーコってすごいストイックだよね。」って言われるんだけど、私はヨガが出来なくなったときに「もっと真面目にやってればよかった。」って思いたくない。

「私もうあのとき本気でやりきったからいいや。その代わりにプラーナヤーマやる時間ができたし、よかった。」って言いたいの。

頑張って生きた分だけ「諦める」んじゃなくて「手放すこと」ができるんだよね。

マットの上は性格が出る。プラクティスが教えてくれること

ヨーコ・フジワラが生徒さんの前で太陽礼拝のデモンストレーションを行っている様子

1年に1度の来日ワークショップではヨーコ・フジワラの生の太陽礼拝を見ることもできる。

ヨガジェネレーションスタッフ

素晴らしい意志の強さですね。それにすごくロジカルで冷静だなと思います。昔からそうなんですか?

ヨーコ・フジワラ

そんなことないですよ(笑)昔はとても感情的な人でした。それに感情に流されちゃう人だった。今でこそ、わーって怒っても、「あ、怒ってるな。」って客観的に自分を見れるようになったけれど、昔は怒ったり、悲しくなったりしたら、思いっきりそっちに飲み込まれちゃってた。

これもプラクティスを通して学んだの。

ヨガジェネレーションスタッフ

プラクティスでそんなことまでわかるんですか?

ヨーコ・フジワラ

そう。プラクティスってすごく性格が出る。マットの上ですぐ諦めちゃう人は、日常で何かあったときにすぐ諦めちゃう。できなくて怒る子とかもそうね。人生でもそれが出てくるの。

ヨガジェネレーションスタッフ

そういう生徒さんにヨーコさんはどう接するんですか?

ヨーコ・フジワラ

長く続くようであれば話をするけど、結構放置するね。(笑)だって、自分のマットの上で怒ったり泣いたりしているわけじゃない?誰にも危害を加えることもないし、自分しかいないんだから、自己解決するしかないじゃない?

ヨガジェネレーションスタッフ

なるほど(笑)確かにそうですね。ヨーコさんにも人生出てるなーと思った経験があるんですか?

ヨーコ・フジワラ

あるある!例えば私、カポタアーサナやるときに、ついつい逃げたくなっちゃうのね。

汗ふいてみたり、他のことやって中々入らないのよ。するとキャシー(ヨーコ・フジワラの師匠)が「ヨーコさ、ヴィンヤサ終わって、膝立ち終わったらすぐカポタアーサナ入って。」って言うのよ。そしたら、もう逃げ道ないじゃない?(笑)

ヨガジェネレーションスタッフ

確かに(笑)

ヨーコ・フジワラ

もちろん、最初はそれにいら立ちもあるんだけど、何回もやっていくうちに、「私って逃げたくなっちゃうんだな。」とか「できないとイライラするんだな。」って気づきになってくる。

でも、マットの上って誰かにあたることもできないし、周りを見渡しても、皆シャーシャーと練習を続けているわけじゃない?なんか怒っている自分がばからしくなってきちゃうのね。

ヨガジェネレーションスタッフ

それは嬉しいこともですか?

ヨーコ・フジワラ

もちろん!「できたー!」ってなるときね。生徒さんなんてみんな子供状態だよね。「できたー!見た?ねぇ見た?」って顔をよくするから。(笑)でもそういうときに限って私見てないんだよね。だけど、その嬉しいって感情も、だんだん「あ、できた。」って冷静になってくる。どんなに喜んでも世界はそのまま進んでるからね。

そもそも、できた、できないって結局どっちでもいいことじゃない?もちろん、ヨガの先生としては、一緒に共感してあげることもあるけどね、

でも、結局のところ、嬉しいや悲しいっていう感情も考えも、全部責任は自分にあるんだなって思うよ。

諦めなければ誰でもできる。それがアシュタンガヨガ

ヨーコ・フジワラが生徒さんの前で笑顔でお話している様子

ヨーコ・フジワラ来日時には総勢550人以上の生徒さんが集まる。


「自分の責任を自分でとる」当たり前のそのことをできる人間が果たしてどれだけいるだろうか。行動、感情、マインドすべてにおいて、無意識に通り過ぎてしまうようなこと1つひとつと丁寧に向き合い意識化するプラクティス、それがアシュタンガヨガだ。

ヨーコ・フジワラはアシュタンガヨガをこう語る。

やる気さえあれば誰でもできる。諦めさえしなければ誰でもできる。それがアシュタンガヨガ。

と。

そして、ヨガを通して何を伝えたいですか?という最後の私の質問にこう答えた。

一番は、Be Real。仮面かぶって生きていたり、かっこつけたりせず、本当の自分であること。自分らしく、着ぐるみを着ずに、生きてほしいっていうことかな。

「自分らしく」「ありのままで」。ヨガをしている人であれば一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。この言葉。だけど、本当にそれを体現できる人は限りなく少ない。

人は
人から良く見られたい。
人から嫌われたくない。
人より勝っていたい。

そういう生き物だ。しかも、一度受け入れたら終わり、ではない。アシュタンガヨガをしていると毎日そんな自分に出会う。「またか」と思うこともざらにある。飽きもせず、これとずっと向き合い続けているから、ヨーコ・フジワラはかっこいいんだと思う。

「死ぬまで、私は私でしかないし、私としか生きることはできない。もう受け入れようよ。(笑)」

ヨーコ・フジワラの太陽礼拝を見ているとそんな声が聞こえてくる気がするのだ。

唯一無二の体験ができると言われている、ヨーコ・フジワラが行うヨガ留学プログラムサンガワイ。3週間。自分と向き合う覚悟ができたら、ヨーコ・フジワラと過ごしてみて欲しい。絶対に後悔させない。きっとあなただけのヨガが、あなただけの人生が手に入るはずだから。